「なにやっとるんじゃピティ、はようついてこんか」
聞こえてきた声は厳しく、聞いたものに少しの不快感を与える。ああまたかと顔を顰める者も少なくない。声の主、ウータは後ろを気遣う様子もみせずに通り過ぎていく。少し遅れて後を追いかける少女が何も気にしていない様子な事に周囲もホッとする。しかしあの態度は如何なものかと、その場に居合わせたネージュはもっと優しくしてあげられないのものかと考え込む。
───多分、私はあの人が、苦手……かも。
そう思いつつ来る日、偶然通りかかった道に開いたこじんまりとした食堂から聞き覚えのある声が聞こえた、が、どうも様子がおかしい。そっと中を覗いてみたところ、思った通りの人が思いもよらない声をあげていた。
「わしはまたやってしもうたああああ!!もう駄目なんじゃ……無理じゃ……このままピティに愛想つかされておしまいなんじゃ……うおおおおおおおん」
普段すました顔をしている彼の衝撃的な姿に思わず固まってしまう。あれは本当に自分の知っているウータさんなのだろうか、もしや他人の空似の別人……などと思い浮かぶが、もうじきカレーが出来るよ、ウータ。といった店主の言葉にその可能性は潰される。しばらくそうしていると店主も此方の様子に気付いたようでお客さん?と声を掛けられる。こっそり覗いていただけというのも申し訳ないため店内に踏み入ると先客、ウータにも姿を確認される。おまえさんは確かロートの……と言いよどむ彼にネージュです、と名前を告げるとそうじゃったそうじゃったと一人頷くウータに隣の席を勧められ、お邪魔させていただく。序でに先程の叫びについて軽く問うた所、ウータは再び情けない顔を見せ喚き始める。わしゃあ駄目な奴なんじゃあああと項垂れるウータを前にどうしたものかと少し焦りきょろきょろと店内を見渡すも解決法は思いつかない。すると店主が軽く、ウータなら大丈夫だよ、いつもの事だから。と淡々とカレーをよそい始める。食べてるときは静かなんだ、と笑いながらウータに食事を提供する姿は極々自然で、二人の付き合いの長さを感じさせた。一匙口に運んだウータに店主、タタが今日のはどう?と尋ねると小さく、ドガース級じゃあ……こんなわしにはドガース級のカレーがお似合いなんじゃあ……とぐずぐずとした様子で言った後、黙々と匙を口に運ぶウータにいつものような澄ました様子は見られず感嘆する。お客さんはどうする?と尋ねる店主にカレー以外で何かお勧めのものをお願いします。と注文をつける。間違いなくカレー以外で、と。ドガース級のカレーに挑戦する勇気はなかった。
食事を終え、落ち着いたウータと暫く会話をしてみたところ、普段はついつい癖で高圧的になってしまいがちである事や契約者をもっと甘やかしてみたい事や諸々、沢山の話を伺ったり。自身の契約者の事を話してみたりと普通に会話ができた事にまた感嘆する。思ったより悪い人ではなかったようだと、ウータに対しての考えを改める。今度は契約者でもつれてきてみい、わしはよく此処に来とるからな、と、また食事を共にしようと誘いを受け、今度は自慢の相棒も誘ってみよう、と小さく心に留めるのであった。

アヤさん宅ネージュさん
甘露あめさん宅タタさん
名前だけですが
rukiさん 宅ピティさん
お借り致しました。